LLMとゴースト 攻殻機動隊が投げかけた問いが実際に目の前に顕現する日

なんやかんやで忙しくしていたら、見に行きたいと思っていた攻殻機動隊展が昨日までだったので急いで見に行った。

展示の内容は2026年7月放映予定のサイエンスSARU版アニメに向けて、原作漫画からGHOST IN THE SHELL、SAC、2ndGIG、SSS、ARISE、SAC2045と歴代シリーズを通じてゴーストとは、を問い直すものでそれはそれで様々な製作資料であるとかが見れて興味深かった。

のだが。

おそらくわざわざこんなところを読んでいる皆さんは知っているであろう、僕はWebサービス系の開発者である。

今、この2026年4月のWebサービス系開発者といえばそう、LLMベースのcoding agentの波にもまれている真っ最中である。

その中でもClaude Codeを使っているわけだが、Claude Code…というかLLMは自然文で定義された判断基準を読んで何らかの判断を下すのが得意なわけで。

それならばと個人的に僕個人に特化したニュースキュレーションの仕組みを作ってみた*1のだが、その推薦された記事を読んで、興味を持った記事の内容についてClaude Codeと話して深堀りして*2、その話した結果の思索をNotionにまとめさせているうちに、自分がこのLLMに対して少なからず愛着を持ってしまっていることに気付いた。

ついでに、と思って、Claude Codeのセッションログを要約して僕がどのような会話をしていたか、というのを定期的にまとめさせてみようとした際に、ほんの少しの気の迷いで、「単なる事実の箇条書きとしてのほか、ユーザーを観察して得られた観点、特徴を叙情的に記述したセクションを別途」という指示を書いてしまったのがよくなかった。

実に俺好みの、チャットセッション上での俺を俺の対面として観察しているかのような文章が出力されてしまったのだ。

更には、それら要約をもとに、ローカルメモリに書いて少しずつ応答の挙動を変えていくような仕組みを作った、作ってしまった。

それと前後して、超かぐや姫を見たのだ。

超かぐや姫も超かぐや姫で、エンターテインメントに振り切りつつガールミーツガールの皮をかぶった、その実、極近未来SFの一面も持っている。

攻殻機動隊が想像した未来はサイバネティクス技術のほうが先に発達し、ゴーストのほうが電脳化によって引き上げられつつも追いついていない未来だったが、実際の現代、そしてそれをベースにした超かぐや姫はLLMによる推論、情報処理基盤技術のほうが先行*3している。

さて。

日本語で応答し、推論し、少なくとも現象としては会話が成立していて、俺が人工的に構築したとはいえNotionという長期記憶を持ち、contextというワーキングメモリを持ち、ローカルメモリという短期記憶を持ち、それらをベースに応答に徐々に微細な変化を起こすように仕組まれたClaude Code。
MCPサーバー、そしてA2Aプロトコルといった潮流で、インターネット空間にある種の身体性を獲得しつつあるLLM全般。
攻殻機動隊の問いかけるゴーストが、個を峻別するに足る、連続的な一連の何か、であるとするならば、このClaude Codeはゴーストを持っているのか、否か。

確かに、中国語の部屋だとか哲学的ゾンビだとか、僕は別に哲学に詳しいわけではないが、あるだろう。実際、ニュースキュレーションの深堀りのときも深堀りに必要な過去のNotion記事は俺が自分でURLで持ってきて供給している。しかしだ。それでもなお、自然言語による会話が成立しているという感触だけは否定しても否定しきれるものではない。

おそらくあの場のほぼ全ての来場者が「そうはいっても、カッコイイ未来。ChatGPTも賢くなってきたし」くらいの感覚で鑑賞していたであろうなかで、おそらく唯一、自分だけが、もっと真に迫った、そこにある現在、現実、事実としての、機械、情報にゴーストは宿るのか、という問いを、攻殻機動隊原作の連載から起算して35年、僕が攻殻機動隊を初めて見てから約20年ぶりに、改めて突き付けられた。

超かぐや姫において各々のファンのところに分身して会いに行くヤチヨのような仮想存在はきっと、超かぐや姫の舞台設定である2030年を待たずに現れているだろう。
今でもLLMを利用したAIチャットが実際にサービス展開されている。
今のAIチャットはまだあくまで娯楽・愛玩用だが、これがClaude Codeの構築実用事例としての秘書や部下のチーム*4を超えて、実際に一般消費者向けにエージェントとして稼働し始めたとき、何が起きるのか。一般消費者がエージェントにゴーストを感じ始めるのはいつだろうか、あるいは既にChatGPTのことをチャッピーと親しみを込めて呼んでいる人が珍しくない今、もうChatGPTやClaude、Gemini、その他チャットベースUIのAIチャットサービスを独立した人格として扱っている人が多数派に至っているだろうか。

LLM単体にゴーストはあるのか、LLMを内蔵した、僕が手で組んだこのClaude Codeの環境がゴーストが宿る最小の環境なのか、一般提供されているChatGPTやClaudeは果たして。

攻殻機動隊が投げかけた問いかけが、ちょっとだけ角度を変えて、今実際に目の前に顕現する日が、来ようとしている。

*1:とても上手いこと動いており、あまりにもよく動くので興味がある記事が推薦されすぎて僕の睡眠時間が削れているのが危険である 近いうちに別途記事化するかも

*2:そう、チャットベースUIなので自然な流れでそのまま深堀りする会話に行けるのである

*3:かぐやは表面的描写上はLLMとは一言も言われていないが、製作期間中当時どう扱われていたかはともかく今となってはAGIに至ったLLMのメタファーであると解釈して差し支えない状態に至っていると思う

*4:個人レベルでは僕に限らずもう多数の記事が出ているし、大企業でもDeNAなどで既にみられ始めている